鑑賞する観点からの良い修理の仕方<br>〜ポンペイ遺跡〜
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【鑑賞する観点からの良い修理の仕方 〜ポンペイ遺跡〜 】


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鑑賞する観点からの良い修理の仕方


さて、イタリアを旅行していた時の話になります。
〜ポンペイってナポリの近くにあったんですね。
今まで全く知りませんでした。

僕と同じようにポンペイを知らない方の為に、豆知識。
紀元1世紀頃に、火山の突然の爆発により、そのまま、火山灰やら土石流やら に襲われて、一瞬で壊滅した有名な町です。

いまだに、発掘しているようで、観光客が歩いている脇で、のんびりと発掘作 業をしている人たちがいました。
もう何年ぐらい発掘作業をしてるんだかわかりませんが、配られたパンフレッ トを読むと、軽く数百年前から始まっているようです。

かなり、巨大な町です。
一日がかり…つかれました。
しかも、イタリアの観光地は総じて不親切な感じがしますが、ここも例に漏れ ず…きっかった。

あんなに巨大な遺跡なのに、チケットは一日券じゃないんですね。
一度出たら、もう一度買いなおさないと入れない…だから、外に出て昼飯を食 べに行くこともできない。
一軒だけ、中にレストランがあるけど、すさまじい込みようで…食べれない。
他にも8時半の開館に行ったら、10時半になっていたり…
トイレは遺跡の外にあるんで、係員に話して、わざわざ、エントランスの外に 出してもらったり…。
見所が、結構閉まっていて見れなかったり…。
等々…愚痴ですけどね。

地元の人かは知りませんが、弁当を持ってきている人たちが結構いました。 賢いですね。
バッグからごそごそ、アルミホイルをとりだして何かを食べ始めたのですが、 それがパンなんですね。
あれが、おにぎりだったら、全く日本と同じところでした。

ちなみに…日本人というとツアーばっかりで!
という風に日本人旅行者を非難する方々が一部いますが…、ご安心を。
外国人もみんなツアーです。
イタリア語…ドイツ語…スペイン語…英語…フランス語…その他もろもろ。
みんなツアーで見に来てますから。
2〜30人ぐらいの大人数が、ぞろぞろと旗を振ったガイドの後についていくサ マもまったく同じでし、 わかりやすいように、同じツアーではみんな黄色い帽子をかぶっていることも ありました…。
一体、誰が日本人はツアーばっかりでダメだといい始めたんでしょうか?

◆ 鑑賞する観点からの良い修理の仕方

さて、ポンペイ遺跡は鑑賞する側からすると、実はあまり良い修理とはいえないと思いました。
なぜか?
今回は、鑑賞する人の立場にたった修理という考え方の話をしてみたいと思い ます。

みなさん、良い修理って言うのはどういうもんだと思いますか?
壊れているものを直すって言うことですから、それ以上壊れないようにするっ て言うことは重要ですよね。

保存の点だとそれだけで充分なのですが、文化財の活用というもうちょっと、 広い点からみると、それだけでは不十分だったりします。
…具体的に言うと、ある程度復元したりするわけです。
専門家が見たらわかるというものでも、普通の人には、復元しないと、なんだ かよくわからない…と言うことが往々にあります。
また、復元した方が華もあるので、大体、損傷が激しいものの場合、仏像の修 復でも、結構、復元が普通に行われます。
問題は、その復元が妥当なものか?
という点に集約されるわけですが…これって、かなり、主観的なものですから 、人によって修理の出来上がり具合が全く違ってたりします。

…タダ、あんまり違っていても困りますから、一応、当初部分の保存という原 則があります。
まともな修復技術者に修理を依頼すれば、修理個所と元の当初個所がある程度は、判別がつくように修理するはずです。
(けっこう、そうでないとこも多いけど…)

「当初部分の保存という原則」
これはポイントですから、仏像とか修理に出す時は修復者にチェックしたほう がいいです。
でないと、ひどいありさまになって戻ってくることもマレにあるようです。

「当初部分の保存という原則」
これは、どういうことかというと、単純に言えば、復元個所と当初部分の判別 がつくということです。
さらにいえば、修理個所と当初個所の判別もつくというのもポイントですかね。
これって、結構簡単なことのようですが、実際に修理してみると、難しいんで すよ。
あちらが立ったら、こちらが立たずみたいなもんで、バランスが必要です。

さて、この視点からポンペイ遺跡を見てみると…
どれが、元のもので、何処から何処まで新しいのか、全くわかんねぇ…。
ということでした。

いやぁ…部分的にはわかる場所もあるんですが、わかりにくい場所もおおい。
これが細かいとこなら良いんですが、けっこう、大規模に作っちゃっている部 分も多いようなので、 良くないんじゃないかなと思ったわけです。

この新しく作った個所は、何処まで考古学的な裏づけがあるのかわかりません が、 あたらしく、古いものの上に復元するなら、何処までが復元されたかがわかる ような何らかの処置が必要だろうと思ったわけです。
だって、復元したところの形が正しい可能性は低いわけなのに、それを見た、 大多数の人々はそれを正しい形だと思ってしまうわけですよ。
それは、あまり良くないかな…と。

まぁ、それがわかったからといって、生活には全く支障はないわけなんですが …。
と、愚痴ったところで、最後にポンペイの遺跡の修理を持ち上げておきますと 単純に巨大遺跡をここまで、修復してみんなが見れるような形にしたのは、凄 いことだと思います。
それにかかった、労力、時間、お金…すごいでしょうねぇ…。
その巨大さに見るだけで、圧倒されますから…。

そういう力の前では、そういう、何処までが当初部分か復元部分かわかんねぇ!
というつぶやきは、無意味ですね。
そういうことも、感じた遺跡でした。

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