仏像の壊れ方
漆

【仏像の壊れ方】


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仏像の壊れ方

〜 仏像の壊れ方にはいくつかの種類があります。
ざざっと、思いつくままに書き連ねてみましょう。

欠損・折損
亡失
干割れ
虫害
鼠害
腐食
剥落
修理損
変色
風化
火災

…こんなところでしょうか。
大きく分けると、

1.自然劣化
2.環境被害
3.人災

に分けられると思います。
それぞれ、説明していきましょう。


1:自然劣化 

干割れや漆の劣化、彩色の変色、膠の接着力が落ちる…。
これらは木材、絵の具や膠が光や熱によって自然劣化していく為です。
日本では風化した雰囲気が好まれる傾向にあるため、 これら、経年変化が起こっても、壊れとは認識されないこともあります。

しかし、膠の接着力が落ちれば、寄木造りの像でしたら、各部材が遊離しバラバラになります。
そして、多くの場合、そのまま、部材が散逸したりなくなったりします。
特に何もしなくてとも、仏像が壊れていくのはこのためです。
同時に彩色もほぼ、日本画と同じく、絵の具の固着を膠で行う為、膠が劣化すれば、剥落をなどの損傷が生じます。
漆は酸、アルカリ、その他薬品に強いとよく言われますが、紫外線に対して脆弱な為、やはり、剥落していきます。


2:環境被害 

最近では酸性雨などもあげられますが、主に生物被害です。
虫による虫害。
鼠による食害、糞害。
カビによる腐朽、などがあげられます。
構造体である木材そのものに影響を及ぼす為、彩色層などにも当然影響が出ます。
特にひどい腐朽になると、彫刻表面が腐ってなくなる上に材そのものもスポンジのようになり、 構造を維持できなくなります。
また、像自体、ほとんど動かされることがない為、鼠などの巣になりやすいようです。
像に穴を開けたり彫刻をかじりまくります。


3:人災 

人災は他の環境被害や自然劣化に比べて、結果がひどくなる傾向があります。
まず、盗難。
盗まれたものは、ほとんどの場合、持ち主に戻ることはありません。
ひどい話では、普通の観光客が盗難することもあるようです。
海外などに流出した場合は、なおさらです。
火災、放火、失火。
火事などで像が燃えた場合、修理は不可能に近いのが現状です。
やるとしても、その燃えた炭の形を、形状保存する程度です。
寂光院の地蔵菩薩や東寺の四天王等の例があります。
(炭の上に樹脂などで、モデリングして復元する方法もありますが、それは文化財の保存ではなく、復元になります。)
過失、いたずら。
掃除中に指を折ってしまったという軽いものから、何かをぶつけて壊してしまった…等々。
運搬中に、落として、大破したなどという話も聞いたことがあります。
また、仁王像など屋外に安置してあるものの場合、落書きなどされることがあります。
さらに、仁王像の玉眼を空気銃で狙うという罰当たりな子供もいるようです。
子供の頃…思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか?


4:修理損

後世に本来の造像当初の形から、別の状態に改変することがあります。
例えば、玉眼の改造です。
また、寺の宗派が変わったときなどは、それまで、阿弥陀であったものを釈迦にしたり、 それを逆にしたり、(手を継げ変えます)ということが、よく行われています。
実用品としての修理ですから、当時としては普通のことでしたが、現在では文化財的修理の考ええ方が 入ってきたため、”当初状態からの形の変更”は修理損と判断されます。
(お寺にとっては損傷ではないといえますが、美術史家にとっては損傷と判断します。)

また、実用品としての修理であっても修理技術が悪かったり、あからさまに違和感がある修理もあります。
こうなってくると、単に当時としても可だったといえないものもあります。
例えば、 ペンキで塗りたくったり…。
全身を膠で紙張りした結果、彫刻表面が虫で食われ放題になったり…。
頭部を彫り直したり…。
台座の順番がばらばらであったり…。
現代でも、残念なことですが、修理を頼んだ結果、前より悪くなったという話が結構あるようです 。

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